この記事でわかること
契約前の「募集」に絞った記事です。沖縄の不動産会社が生成AIで物件紹介文・ポータル掲載文・チラシのコピー・多言語紹介を作る手順と、宅建業法の広告規制でAIに任せてはいけない箇所を解説します。契約後の入居者対応・修繕などの管理業務は別記事で扱います。
この記事の要点
- 物件紹介文・掲載文・広告コピー・多言語紹介は、物件情報を「事実だけ」で渡せば生成AIで下書きできます。
- 不動産の広告は宅建業法と公正競争規約の規制を受けます。徒歩分数、「新築」などの用語、最上級表現、広告開始時期はAIに任せてはいけない領域です。
- 契約後の管理業務(入居者対応・修繕・家賃管理)は別記事で扱います。
この記事の守備範囲:契約前の「募集」の文章づくり
物件紹介文、ポータルサイトの掲載文、チラシ・SNSの広告コピー、外国人向けの多言語紹介など、見込み客に向けて出す文章を扱います。
契約後の入居者対応、修繕手配、家賃管理といった管理業務のAI活用は、沖縄の不動産管理会社がAIで変わる:物件管理を効率化する5つの領域で解説しています。募集と管理では、使うAIも注意点も別物です。
物件が増えるほど、文章の作成が追いつかなくなる
新しい物件を預かるたびに、書くものが増えていきます。ポータルサイトの物件紹介文、チラシのキャッチコピー、SNSの投稿文、オーナーへの募集報告。1物件あたり30分でも、月に20物件あれば10時間です。
しかも、この作業は「うまい人」に集中します。文章を書ける営業担当が1人抜けると、募集の質が一気に落ちる。属人化しやすいのに、教えるのが難しい業務です。
生成AIが効くのは、まさにこの部分です。ただし丸投げはできません。不動産の広告には法律の規制があり、AIが最も間違えやすい領域だからです。手順と、任せてはいけない箇所を順に見ていきます。
物件紹介文をAIで下書きする手順
ステップ1:物件情報を「事実だけ」で渡す
間取り、専有面積、築年数、階数、方角、最寄り駅・バス停からの実距離、駐車場の有無と台数、主要な設備。ここに推測を混ぜないことが最重要です。渡した情報が事実なら、AIは事実の範囲で書きます。曖昧に渡すと、AIは足りない部分を埋めようとします。
ステップ2:ターゲットと文字数を指定する
「単身の社会人向け」「ファミリー向け」「移住検討者向け」で刺さる要素は変わります。ポータルごとの文字数制限も同時に指定します。
以下の物件情報だけを使って、ポータルサイト用の紹介文を作成してください。
・ターゲット:那覇市内に勤務する単身社会人
・文字数:全角300字以内
・条件:情報にない設備・眺望・周辺施設を追加しないこと。断定的な最上級表現を使わないこと
【物件情報】(ここに事実を貼る)
ステップ3:複数パターンを出して選ぶ
1回で完成させようとせず、3〜5パターン出させて良い部分を組み合わせます。AIの強みは「速く量を出す」ことであって、「一発で正解を出す」ことではありません。
ステップ4:人が事実確認する(省略不可)
後述しますが、ここを飛ばすと法令違反になり得ます。チェックする人を決めて、確認したら記録を残す運用にしてください。
宅建業法・表示規約でAIに任せてはいけない箇所
不動産の広告は、宅地建物取引業法と「不動産の表示に関する公正競争規約」の規制を受けます。生成AIはこの規制を知らないまま、それらしい文章を書きます。違反したときに責任を負うのは、出稿した事業者です。
誇大広告・不実の表示(宅建業法32条)
実際より著しく優良・有利であると誤認させる表示は禁止されています。AIは魅力的に書こうとするため、物件情報になかった設備や眺望を書き足すことがあります。「オートロック完備」「海一望」といった一文が、渡していない情報から出てきていないか、必ず突き合わせてください。
徒歩分数・距離
徒歩所要時間は道路距離80mにつき1分として算出し、端数は切り上げるルールです。AIに計算させないでください。 地図上の直線距離で計算したり、根拠なく丸めたりします。分数は自社で確定した数字を渡し、AIには書き換えさせない指示を入れます。
「新築」などの用語
「新築」は建築後1年未満かつ未入居のものに限られます。AIは築浅物件に対しても語感で「新築同様」「ほぼ新築」と書きがちです。用語の定義がある語は、使ってよい物件かを人が判断します。
最上級・断定表現
「最高」「完全」「万全」「日本一」といった表現は、客観的な根拠がなければ使えません。プロンプトの段階で「最上級表現を使わない」と明示しておくと、修正の手間が大きく減ります。
広告開始時期の制限
未完成物件は、建築確認を受ける前に広告を出すことができません(宅建業法33条)。AIは進行状況を知らないので、この判断は完全に人の側の仕事です。
おとり広告
成約済み・存在しない物件を掲載し続けることは禁止されています。AIで大量に文章を作れるようになると、掲載の取り下げが追いつかなくなるという別のリスクが生まれます。作る速度を上げるなら、消す仕組みも同時に整えてください。
ポータルサイトごとに最適化する
SUUMO、HOME’S、アットホームなど、掲載先によって表示される文字数も、閲覧者層も違います。同じ原稿を使い回すより、AIで出し分けたほうが反応が変わります。
- 文字数に合わせて3種類作る:一覧に出る短い要約、詳細ページの本文、キャッチコピーの1行
- 訴求の順番を変える:同じ物件でも、価格を先に出すか、立地を先に出すかで刺さる層が変わります
- 検索されるキーワードを入れる:「駐車場2台」「ペット可」「オール電化」など、条件で絞り込む人が使う語を本文にも入れておく
自社サイトに載せる文章は、ポータルと同じ内容にしないでください。同一の文章を複数サイトに置くと、検索エンジンからは重複した内容として扱われます。自社サイト用は、周辺環境や暮らし方に触れた独自の文章にします。
チラシ・SNS用のコピーを量産する
ポータルの本文と、チラシのキャッチコピーは求められるものが違います。チラシは「読ませる」より「止める」ための文章です。
- 10〜20案を一度に出させ、その中から2〜3案に絞る
- ポスティングエリアごとに変える(学区、通勤先、家賃帯)
- 反応があった号のコピーを記録し、次回のプロンプトに「過去に反応が良かった例」として渡す
この最後の1点が効きます。自社の実績を学習材料として渡し続けると、出てくる案が自社の客層に寄っていきます。
外国人向けの多言語紹介文
沖縄では、米軍関係者や外国人居住者からの賃貸需要があります。英語・中国語・韓国語での物件紹介は、AI翻訳で対応できる領域です。
ただし、次の2点は日本語のとき以上に注意が必要です。
- 契約条件は直訳しない:礼金、更新料、連帯保証人、原状回復といった日本固有の商慣行は、直訳すると通じません。「何のための費用か」を説明する文に置き換えます
- 免責の一文を入れる:翻訳版は参考であり、契約は日本語の書面による旨を明記します
なお、入居後の外国人入居者とのやり取り(問い合わせ対応、更新案内など)は募集ではなく管理の話です。そちらは管理業務の記事で扱っています。
沖縄の物件で、書き方に注意が必要なもの
基地に近い物件
騒音や飛行ルートに関わる情報を、募集文章で伏せるべきではありません。AIは不利な情報を書きません。書くべきことを書かせるのは人の指示です。内見前に伝わっていない条件は、後々のトラブルと早期退去につながります。
「海が見える」の扱い
眺望は将来にわたって保証されるものではありません。前面に建物が建つ可能性がある場合、断定的に価値として打ち出すのは避けます。現況として書き、保証はしない表現にとどめます。
塩害・台風
海沿いの物件は設備の劣化が早く進む傾向があります。募集段階では書きにくい情報ですが、内見時の説明とセットで扱う前提を社内で決めておきます。
駐車場
那覇市中心部と、それ以外の地域では駐車場の重みがまったく違います。ターゲットを「那覇市中心部・モノレール沿線」と「車が前提の地域」で分け、AIへの指示を変えるだけで訴求が合ってきます。
心理的瑕疵
告知が必要な事項の判断に、AIを使ってはいけません。国土交通省のガイドラインと自社の判断基準に従い、人が決めます。
導入するときの進め方
- 1つのポータル・1つの物件種別から始める。全部を同時に変えない
- プロンプトを社内で共有する。属人化を解消するのが目的なので、うまくいった指示文はテンプレート化して全員が使えるようにする
- チェック体制を先に決める。誰が事実確認するか、確認済みをどう記録するか。ここが決まっていない状態で量産を始めると、法令違反のリスクだけが増えます
- 2週間で効果を測る。作成時間、問い合わせ件数、内見数。数字を見てから範囲を広げる
やらないほうがいいこと
- 物件情報を丸ごとAIに投げて全自動化する:確認が追いつかず、誇大広告のリスクが上がります
- 徒歩分数・面積・築年数をAIに書かせる:数値は自社で確定したものを渡し、変更させない
- 同じ文章を全ポータルに流用する:重複として扱われ、自社サイトの評価も下がります
- 個人情報を含む問い合わせ内容をそのまま入力する:氏名・連絡先は外してから使う
まずは現状を見てもらうところから
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